🇩🇪体系的ドイツ語文法講座
全独合格者がレクチャーする、体系的ドイツ語文法講座
執筆者:千葉
注意書き⚠️
私個人は初学者が新たな言語を学習する際に、細かい文法で手間を取りイライラするよりも、スラスラ文法項目の学習を進めてゆき当該外国語を学ぶ楽しさを感じることが一番効果的であると考えています。
故に、詳細な文法項目をあえて無視し、巨視的にドイツ語文法を総括しいわゆるドイツ語のテクニックを以下に記している次第であります。
だからといって、自らのドイツ語テクニックの優位性を主張するつもりは毛頭無いですし、そもそも本場ドイツ語圏のMuttersprachlerにとってすればこんなテクニックなんぞあるはずもありません。
また私個人として、いわゆる詳細な文法項目の研究の歴史・その重要性も理解しているつもりですし敬意も払っています。
ですが、この英語一本化の波が進行し、高等学校・民間の語学学校で英語以外の外国語を教える組織が減り学習機会がますます失われつつあり現在窮地に立たされているドイツ語をはじめとするフランス語・中国語などの諸言語においては、その地位の回復のためにも更なる当外国語の学習者の増加が求められるわけであって、そのためにもこのようなサイトが必要なのです。
身寄りの無い学習者に一体誰が手を差し伸べられるのでしょうか。
その点をご理解頂きたい。
Ⅰ.《発音》
まずドイツ語の基本は、①単語はローマ字読み ②アクセントは頭にある の2点です。
この基本原則を用いて、文頭にアクセントを置きながらローマ字で読めば、大抵の単語は読めるということになります。
(例:Abend→アーベント/Appfel→アップフェル/arm→アルム)
よって英語のように一語一語の発音を覚える必要は無く、ドイツ語においては例外的なアクセントを持つ単語や例外的な発音をする綴りのみを覚えればいいことになります。
例外的なアクセントを持つ単語については、同サイト記事『Weiter voran ! 』のアクセント問題の項でまとめてあるので、そちらを参照してみてください。
ここでは例外的な発音をする綴りについてのみ掲載していきます。
🌸ä(aウムラウト)→eと同じ発音"エ"(初学者のために便宜的に)
🌸ö(oウムラウト)→eと同じ発音"エ"(初学者のために便宜的に)
🌸ü(uウムラウト)→uと同じ発音"ウ"(初学者のために便宜的に)
例 :Bäcker→ベッカー /böse→ベーゼ /dürfen→デュルフェン
🌸二重母音au→アオ("アウ"ではない)
例:blau→ブラオ
🌸二重母音eu→オイ("エウ"ではない)
🌸二重母音äu→オイ(euに同じ)
例:Leute→ロイテ /euch→オイヒ /Häuser→ホイザー
🌸二重母音ei→アイ("エイ"ではない)
🌸二重母音ie→イー("イエ"ではない)
例:nein→ナイン /lieben→リーベン
🌸h→①母音+h=母音の長音化 ②h+母音=普通のh行音
例:Autobahn→アオトバーン /helfen→ヘルフェン
🌸ch→①a,o,uの後="ハ","ホ","フ" ②それ以外="ヒ","ヒェ",k行音(chは単語毎に覚えた方が良いです)
例:Nacht→ナハト /hoch→ホーホ /Buch→ブーフ /ich→イヒ /Chemie→ヒェミー /sechs→ゼクス
Ⅱ.《名詞の性》
英語と異なりドイツ語では単語1語1語が”男性”、”女性”、”中性”のいずれかの"性"を持っています。
母"Mutter"は女性名詞、兄弟"Bruder"は男性名詞といった自然性を持つ名詞は自然性と名詞の性が一致します。しかしスペイン語やロシア語などと異なり、一部接尾語を除き、語尾から性別を必ず判別出来るとは限らないので、単語毎に性を覚える必要があります。
その際には男性名詞にはder(デア)、女性名詞にはdie(ディー)、中性名詞にはdas(ダス)といった各々の性の定冠詞を付けて、das Buchなどのように定冠詞+名詞でセットで覚えるようにしてください。
ここでは性別判定が可能である例外的な接尾語のみを掲載していきます。
🌺語尾が-eで終わる語→大半が女性(f.)
(※女性でなければ、男性弱変化名詞 |※※der Käseだけは弱変化しない)
🌺V+ung (=動詞の名詞化)→女性(f.)
🌺形容詞+keit (=形容詞の名詞化)→女性(f.)
🌺形容詞+heit (=形容詞の名詞化)→女性(f.)
🌺名詞+schaft→女性(f.)
🌺-er→男性(m.)
🌺-ént→男性(m.)+弱変化
🌺-ánt→男性(m.)+弱変化
🌺-íst→男性(m.)+弱変化
🌺Ge- (=集合名詞化)→中性(n.)
🌺他の品詞をそのままの形で名詞化したもの→中性(n.)
Ⅲ.《ドイツ語の基本》
突然ですが、
Gestern bin ich in die Uni gegangen , um einen Unterricht zu nehmen.
Ich bin gestern in die Uni gegangen , um einen Unterricht zu nehmen.
Um einen Unterricht zu nehmen , bin ich gestern in die Uni gegangen.
のいずれもドイツ語では正しい文です。
英語と同様にドイツ語をSVO構造と捉えようとすると、定型第2位・完了形や分離動詞における動詞要素の分離などの矛盾に出くわします。
それは英語はSVO型の孤立語(語を並べる場所で、語の文における役割を規定する言語)である一方で、ドイツ語はSOV型の屈折語(日本語のように、語尾などの語の形を変化させることで文における役割を規定する言語)であるからです。(つまり、後で⭐️⭐️で言及される動詞の活用や冠詞・形容詞の活用も、文におけるその語の役割を規定している大事な要素だということです。無駄に活用がある訳ではありません。)
こうであるのならば、『基本的にドイツ語はSOVの順で並んでいて(=副文、前置副詞句、関係文)、主文においてだけは当該文が主文であることを示すために定型第二位を発生する』と考えると応用が利きます。
またS(主語)とV(動詞)に間にはO(目的語)の他に副詞や前置副詞句なども入りますが、その順番は①再帰代名詞→②副詞→③目的語(O)→④前置詞句と”代・副・目・前”、”だいふくもくぜん”、”大福目前”であることが多いです。これも大福目前と10回唱えて覚えましょう。大福目前、大福目前、大福目前、大福目前、大福目前、大福目前、大福目前、大福目前、大福目前、大福目前。
※※動詞(V)の順番
英語:have V.p.p /can have V.p.p
独語:V.p.p haben /V.p.p haben können
のように動詞(V)の部分の並びは英語の逆で、”後ろへ”続いていきます。
また現在形・完了形・助動詞が複合する場合の優先順位は、現在形(or受動態)<助動詞<完了形の並びです。
例:Der Tisch hat(2) zerstört werden können.(←Der Tisch zerstört werden können hat.
そして動詞の活用に行く前に代名詞を暗記しよう!
※2人称の部分はdu /ihrで始まる(2人称)の方を暗記してください。
Sieから始まる2人称は敬称と呼ばれるもので、duに敬意を加えた敬語のようなもので、3人称複数の代名詞の頭文字を大文字化しただけです。
Ⅳ.《動詞の活用(エストテンテン)》
動詞の現在形の活用について、以下のような表を暗記するように言われますが、そんなことより『エストテンテン』と10回唱えて覚えてしまいましょう。エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン、エストテンテン。
Ich komme
Du kommst
Er kommt
Wir kommen
Ihr kommt
Sie kommen
e/st/t/en/t/en
⭐️⭐️動詞の活用の意義=主語の特定⭐️⭐️
(無駄に活用があるのではありません。)
Ⅴ.《冠詞・形容詞の格変化》
定冠詞の変化が基本となるので頑張って覚えましょう。
定冠詞=英語の”the”と一緒という認識で問題ないです。
ちなみにdieserなども定冠詞と同様の変化をするので、まとめて定冠詞類とも呼ばれます。
(この表を覚えるのが初学者にとっての最大の課題だと思う。)
読み方は男性から順に、デア、デス、デム、デン、女性がディー、デア、デア、ディー、中性がダス、デス、デム、ダス、複数がディー、デア、デン、ディー。
続いて不定冠詞、英語と同様に不定冠詞は数詞のeins(1)に由来を持つので、不定冠詞=英語の”a "と一緒という認識で問題ないです。
語尾に変化すれば”ein+定冠詞”という構造がわかるはずです。
ちなみにmeinなどの所有冠詞なども不定冠詞と同様の変化をするので、まとめて不定冠詞類とも呼ばれます。
読み方は男性から順に、アイネ、アイネス、アイネム、アイネン、女性がアイネ、アイナー、アイナー、アイネ、中性がアイン、アイネス、アイネム、アイン。不定冠詞ein自体の複数形は”a"同様に存在しないが、不定冠詞類として所有冠詞などには複数形が存在する。
そして問題なのは、この形容詞の絡むパターン3つ。
💠《定冠詞+形容詞+名詞》
→考え方
まず、格の重要度を考えたい。
1格の主格とは主語になる際の形
2格の属格とは〜の所有しているという修飾する際の形で、英語のmothers'などに該当する。
3格の与格とは日本語の”〜に”にあたる目的語の概念で、まさにgive O1 O2のO1に該当する。
4格の対角とは日本語の”〜を”にあたる目的語の概念で、最も一般的な目的語。
当然最も頻出度の高い1格・4格が最重要で、2格・3格は二の次になる
よって定冠詞の後ろに形容詞が続く際には1・4格においては e (エッ)と止めて強調し(強変化)、2・3格においては en (エン)と言い切る(弱変化)。複数形においては、定冠詞の後続は en のみ。
そうすれば、男性4格の場合を例外として表のようになる。
(”最初は1・4格→ e /2・3格→ en と割り切って覚えて、後々修正すれば良い。”)
💠《不定冠詞+形容詞+名詞》
→考え方
基本は《定冠詞+形容詞+名詞》と同様で1・4格→ e /2・3格→ en で一緒。
しかし定冠詞類の基本形が崩れている男性1格と中性1・4格において基本となる定冠詞の形を補うとして(ただし-asとは続けられないので-as→-esとなって)、ein+形er+名詞 / ein+形es+名詞という形に落ち着く。
💠《形容詞+名詞》
→考え方
基本形となる定冠詞類の形がなければ、その定冠詞類の形に帰着して落ち着こうとする。
そうすれば表のような変化となる。
⭐️⭐️名詞の格変化の意義=目的語の特定⭐️⭐️
(無駄に活用があるのではありません。)
※例外はあるがまずは細かいことは気にしない!大原則(定冠詞類の形)を基本に!
Ⅵ.《動詞の時制》
そもそも英語と違ってドイツ語には現在進行形は存在しませんし、過去形と完了形を厳密に区別することはありません。
🌻《未来形の作り方》
助動詞wollenまたは助動詞werdenを用いるだけです。
つまり、”動詞の原形+助動詞”。
その差異はwollenが”意志”のニュアンスを持つのに対して、werdenは”推量”のニュアンスを持っています。
🌻《過去形の作り方》
ドイツ語の動詞は、一般的に”X-en”の形で表せるように語幹に”en”がくっ付いている形をしています。
故に以下では”X”は動詞の語幹を表すとして、過去形の作り方は"X-en”を”X-te"の形に変えるだけです。
例:wohnen→wohnte /lieben→liebte /machten→machte
そして過去形の変化はエストテンテンを応用させた -○/-st/-○/-n/-t/-nの”丸スト丸ントゥン”です。(○は空白)
これも10回唱えて覚えてしまいましょう。
cf.過去形も活用させるのならば未来形も活用させることになるが、未来形は助動詞+動詞の原型であり、ここで助動詞は現在形でエストテンテンの活用をさせるので未来形特有の活用は存在しません。
🌻《完了形の作り方》
英語と同様に、”V.p.p.+haben/sein"となります。
seinは動詞Vが発着往来・状態の変化の時のみ用いる助動詞ですので、基本は英語同様にhabenを用いて完了形を作ります。
そしてそのV.p.p.こと過去分詞の作り方ですが、”X-en"を”ge-X-t"の形にするだけです。
また英語同様に、こうして作られた過去分詞は形容詞として用いることができ、V.p.p.+seinの形で受動態の形を作ることもできます。(※sein=be)
例:wohnen→gewohnt /lieben→geliebt /machen→gemacht
では以上の文法の概略を掴んだら、次は自らの手で文法書をもう一度紐解いてみましょう。
理解がより容易になっているはずです。