他言語での大学受験まとめ

大学受験を英語以外の言語(フランス語、ドイツ語、中国語)で受ける「他言語受験」についての情報をまとめています。記事執筆者は全員、この形式の受験の経験者です。

🇩🇪東京大学二次試験について

執筆者:千葉

 

※注意※

以下の記事は2020年度に受験した中の人が書いたものであり、主観的な内容も一部含まれます。また、最新の情報は必ずご自身で、大学のホームページにて確認してください。

 

 まず始めに、世間一般においては入試の外国語=英語という“偏見“が存在します。

小学校における英語必修化や、中学校・高校における英検受験の推奨や、大学入試における民間の英語試験導入など世間では英語教育の重要性が高まりつづける一方で、その世間の風潮の煽りを受けることなく長年変わらずセンター試験はドイツ語・フランス語・中国語・朝鮮語の試験を実施し、東京大学では戦前からずっとドイツ語・フランス語・中国語の試験を実施してきました。

まさにその事実こそが英語以外の外国語にも等しく学ぶ意義があり、多様性を認めることが時代普遍的に重要性を持つことの証左であると言えます。

この理由を以って、東京大学における多様性を持続させるために、東京大学におけるドイツ語入試問題の概略及び具体的な対策方法を紹介したいと思い以下を記します。

 

まず東京大学の外国語の入試においては、以下の3つの方式から受験することが出来ます。

 

1.英語のみ

2.英語(Ⅰ~Ⅲ)+ドイツ語(Ⅳ,Ⅴ)

3.ドイツ語のみ

 

受験業界隈では、俗に2.を“差し替え“と言い、3.を“全独受験“と言います。

差し替えにおける問題Ⅳ,Ⅴと全独における問題Ⅳ,Ⅴは、共通の問題です。(数年前までは異なる問題が出題され、差し替え問題の方が若干簡単な問題ではありました。)

よってここでは、差し替えの問題の内容は全独の問題の内容に重複するので、全独受験の問題を中心に紹介します。

 

 

○試験問題

 

大問Ⅰ『200字要約』(20点)…B5一枚程度の長文を読み、その内容を日本語200字で要約します。

 

大問Ⅱ『和文独訳』(20点)…5行程度の長さの日本文を全文ドイツ語に翻訳します。その内容はエッセイが中心であるために直訳が難しく難易度は高め。

 

大問Ⅲ『会話文の読解』(30点)…一連の複数人の会話文を読み、3つの設問に答えます。答えの核になる要素は文章を精読しないと発見できないことが多いために、いかに独文に熟達しているが重要となる。

 

大問Ⅳ『独文和訳』(25点)…12行程度の長さの独文を8割 or 全部日本語に翻訳します。難易度は比較的簡単である。

 

大問Ⅴ『書き換え・整序問題』(25点)…ドイツ語の文法知識に基づき、条件に従って独文を書き換えたり、指定語句を用いて独文の整序を行います。難易度は簡単でいわゆる点取り問題である。

 

※(xxx)内の点数は予想配点である。東京大学は公式には配点を発表していない。

 

 

○具体的対策

 

大問Ⅰ『200字要約』

→最も難易度の高いドイツ語長文を読解する大問です。まず端的に言うと要約の解答は、本文全体をバランス良く取り込んだ解答となるはずです。しかし長文が最後まで続いている以上は話の重心は後半部にあるので、本文全体を一読した後に後半部の結論に注視しながら前半部を要約すれば、自ずと解答は導かれるはずです。具体的な対策について言えば、単語力を高めるのに専念することが先決です。(白水社『例文活用 ドイツ重要単語4000』や郁文堂『ドイツ単語5500』など)

 

大問Ⅱ『和文独訳』

→最も採点基準のわからない大問です。あの原文を100%完璧に訳せる受験者が存在するとは到底考え難いので、受験者間の相対評価で採点がなされていると考えられます。そのことを念頭に置けば、この設問において求められる能力とは意味内容に反しない独文を最後まで書ききる能力であり、具体的なことを言えば文章をより簡単な文章に変換する技術やドイツ語らしくコンパクトに表現する技術(副文を前置詞句で表現したり、名詞句を造語1語で表現したり)を磨く必要があります。ネイティブやドイツ語の教師に作文を添削して貰うのが一番良いとは思いますが、白水社『しくみが身につく中級ドイツ語作文』を用いるのもアリだと思います。

 

大問Ⅲ『会話文の読解』

→最も対策が難しい大問です。この設問において求められる能力とはドイツ語を精読する能力、つまりは副詞や心態詞に細かい注意を払える能力であるので、傾向対策や知識が必要と言うよりかは根本的ドイツ語の読解力を磨く必要があります。大問Ⅲに関しては具体的に対策用の参考書を挙げることはできません。

 

大問Ⅳ 『独文和訳』

→第三書房『ドイツ語、もっと先へ! Deutsch voran!』上の2013~1986年の差し替えの過去問の演習+長文問題(科学系←独サイト『Deutsche Welle』のTop-Thema記事など)の演習に取り組めば十分ですし、別にⅣに特有な対策は必要ないと思います。

 

大問Ⅴ『書き換え・整序問題』

→第三書房『ドイツ語、もっと先へ! Deutsch voran!』上に2013~1986年の差し替えの過去問が載っているので、過去問を一通り演習すれば十分満点を目指せます。接続法Ⅱ式の仮定法や自動詞の受動態やum不定詞の否定形や男性弱変化名詞などの盲点となりやすい文法項目を特にきちんと潰していってください。

 

 

○過去問の入手方法について

 

差し替え問題の過去問については上に書いたように、第三書房『ドイツ語、もっと先へ! Deutsch voran!』上に2013~1986年の過去問が掲載されています。

一方で全独の過去問については、赤本などにドイツ語の問題の掲載はないので以下の2つの入手方法しか存在しません。

 

東京大学から取り寄せる

東京大学新聞の入試問題解答号を購入する

 

②の場合であれば、東大新聞オンラインから購入することも可能で、解説はないですが模範解答例の掲載があります。

①の場合には解答が付いていないのでご注意を。