他言語での大学受験まとめ

大学受験を英語以外の言語(フランス語、ドイツ語、中国語)で受ける「他言語受験」についての情報をまとめています。記事執筆者は全員、この形式の受験の経験者です。

🇫🇷東京大学差し替え受験について

執筆者:せん

 

※注意※

以下の記事は2020年度に受験した中の人が書いたものであり、主観的な内容も一部含まれます。また、最新の情報は必ずご自身で、大学のホームページにて確認してください。

 

〇フランス語差し替えを決意するまで

私は中高一貫の私立高で計4年間フランス語を学んでいました。

そのうち中学時代の3年間は必修として本当に基礎的なことの学習であり、実質的な学習期間は一年間(週2コマ)といえるでしょう。そして高校一年で仏検3級を取得しました。

その後、高2・高3では一切フランス語の勉強をせず、現役の時は英語受験をしたのですが、結果は64点。英語がこれ以上伸びるとは思えなかったので、浪人生にしてフランス語の勉強を再開し、差し替え受験を決意しました。

 

 

〇フランス語差し替え受験のメリット・デメリット

・メリット

一番大きな点は、第4問、第5問にかける時間を削減できることです。ご存じかと思いますが東大英語の難しさは内容というよりも厳しい時間制限にあります。そこでフランス語に差し替えることで残りの部分に掛ける時間を増やすことができます。(とはいえ時間を短縮できるかどうかはその年の問題次第なところも。詳しくは後述。)特に私の場合4Aの正誤問題は完全に捨てていましたので、フランス語差し替えにメリットを感じました。(4Bもかなり特化した対策を求められるので差し替えは勉強時間の短縮につながるかも。)

二つ目は、入学後の第二外国語の授業で高得点を狙える点です。フランス語受験者は入学後初級フランス語を履修することができませんが、フランス語差し替え受験者は可能です。差し替え受験で合格できるくらいのフランス語力があればまず第二外国語の授業で困ることはないでしょう。進振りのため好成績を目指すのであれば、最低週3コマある2外の授業で楽に高得点が取れるにこしたことはありません。

3つ目は点数が取りやすいということですが、これは世間で言われているほどではないように感じます。そもそも問題がフランス語受験者と同じであるため、特に第4問は簡単とは言いづらいです。おそらく採点基準までフランス語受験者と同一ということはないと思うので、難しすぎるとも言えないと思いますが……。

 

・デメリット

いわずもがな勉強科目が増えることです。第3外国語を初修することにはかなりの時間・労力がかかる、と思います。他の科目の完成度には寄りますが、現役生が3年生から差し替えを考えるのは現実的ではないのかな、とは感じます。

二点目として、フランス語(差し替え)で受けることができる規模の大きな模試はありません。そのため受験生の中での自分の順位を把握するということができないので、勉強計画が立てづらい、ということがあり得ると思います。

 

 

〇勉強法・難易度

以上で述べた通り、私は高校時代にフランス語の初歩を学び、受験フランス語については独学でした。浪人生の4月ごろからフランス語の復習を行い、6月の仏検で準2級を取得しました。当時使っていた参考書は『フランス文法総まとめ問題集』(白水社)と『《仏検》3・4級必須単語集』(白水社)です。特に後者は基礎的な単語に対し、複数の用法がまとめられており第5問を解くうえで必須といってもいいでしょう。受験本番までお世話になりました。あとは公式の仏検対策本も学習しました。

そして秋ごろから本格的な受験対策を始めました。この時期は主に『新・リミュエール』(駿河台出版社)、上で紹介した単語集の続編である『《仏検》準1・2級必須単語集』(白水社)を使用しました。『新・リミュエール』は初学者向けとは言いづらいですが、とても優秀なフランス語参考書です。特に練習問題の質がいいのでこの本をすみずみまで学習すれば受験に必要な知識は身につくと思います。単語集に関しては、2級までで挫折しました。フランス語の語彙の多くは英語に流入していますので、英単語をしっかりと学習していれば理解できることが多いです。また、注なしで単語集に乗っていないような単語が出ることも多いので、単語帳とにらめっこするより文脈から推測する力を訓練する方が重要かもしれません。(とはいえ、より多くの単語を覚えるに越したことはありません。他教科の成績と鑑み、時間が許せば。)

また、フランス語の辞書は必須です。私はアプリ版のプチロワを使っていました。なかなかお高いですが、それに見合うだけの使い勝手だと思います。電子辞書でも追加のSDカードを購入するとフランス語の辞書が使えるようになりますので、そちらでもよいと思います。

 

〇過去問について

上記と並行し、秋ごろから過去問に取り組みました。私は塾や学校に伝手がなかったので東大新聞のバックナンバーを取り寄せ、過去問を入手しました。某フリマサイトなどで出回ることもあるようです。私は10年分を3回とき、本番に臨みました。

10年ほど前に差し替えと2外の問題が統一され、現在はフランス語のテスト問題の第4問、第5問を差し替えで解くことになっています。ですので詳しい内容についてはフランス語の記事をお読みください。差し替えの観点から言うと、第4問はかなり年度によって難易度の差があります。私が実際に受験した2020年の問題はかなり難しく、準2級、2級くらいのフランス語力では正直厳しかったです。差し替えの利点は英語の問題に時間を使えるということにあると思うので、第4問が難しかった場合、時間をかけすぎないほうがいいかもしれません。第5問は毎年出題が似ていますので全問正解も可能だと思います。

 

〇まとめ

・英語が苦手、フランス語のモチベが高い人におすすめ

・高3からの勉強は厳しい

・独学は可能

 

フランス語差し替え受験は、英語が苦手で、しかも受験に向けて余裕がある人にはお勧めできると思います。フランス語というのは国連でも用いられる言語ですので勉強して損になることは絶対にありません。現役生でも数学、国語(古典)が得意で、社会がある程度終わっている人なら一考の価値はあると思います。また、私は語学教室に通うことはなく、フランス語の質問ができる環境があるわけでもありませんでした。ですので完全に独学でも不可能ではないと思います。近年では様々なSNSを通じて、フランス語学習者や母語話者とも連絡を取ることができます。ぜひ有効に活用してみてください。最後にお伝えしますと、私は2020年、外国語の点数は71点で文科一類に合格しました。第4問に全く手ごたえがなかった割には、点数が取れたかなと思います。東大の二次試験における7点は想像以上に大きいです(この7点があれば現役時代合格していましたから)。この記事が差し替え受験を考えている方の参考になれば幸いです。